今回は朗報です。
2019年11月22日の会見で、自民党の世耕幹事長が積極的な財政出動の方向性を示しました。
これのどこが朗報かというと、日本のデフレ脱却の足がかりとなる可能性があるからです。
詳しく説明しましょう。
そもそも現政権の経済政策って?
まずは発言内容を掘り下げる前に、現政権がそもそもどんな経済政策を目指しているか押さえておく必要があります。
前提として、日本は20年以上経済成長の低迷が続いています。
以下は主要先進国の名目GDPの伸び率です。どの国も少しずつ伸びていますが、1995年から日本だけが伸び悩んでいることが見て取れますね。

こうした状況から、2012年の第二次安倍政権では経済政策として三本の矢を掲げました。第一の矢は大胆な金融緩和。簡単に言うと世の中に出回るお金を増やしましょうということです。
第二の矢は機動的な財政出動。ざっくり言えば、必要とあれば時には国債発行も厭わず積極的に政府支出を増やしましょうということです。
第三の矢は成長戦略で、2%程度の緩やかなインフレを起こすこと。この三本の矢がアベノミクスの根幹でした。
ところが実際には、第二の矢はほぼ実行されていないと考えて良いでしょう。赤字国債の発行ペースは増えていますが「機動的な財政出動」で発行されているとは言い難いです。
会見での発言内容は?
今回のニュースは、与党自民党の幹事長がアベノミクスの第二の矢が放たれて来なかったとして財政出動の必要性を示したものです。
特に以下の発言は注目に値します。
教育現場のIT整備など、建設国債の発行対象外の分野では「特例国債をいとわず発行すべき」と主張した。
補正予算真水10兆円・事業費20兆円、特例国債厭わずに=自民・世耕氏 | Article [AMP] | Reuters
建設国債は国債の中で例外的な存在です。
高速道路やダム等の公共事業はまず初期投資をしてモノを作ってしまう必要がありますね。そしてその後に高速料金なり水道料金なりで回収すれば良いわけです。そのために財政法でも認められているのが建設国債です。
これ以外の国債を特例国債、あるいは赤字国債と呼びます。建設国債と違い、返ってくる宛てが最初からあるわけではありません。
世耕幹事長は、それでも国債をいとわず発行すべきと言っています。こうなると、特例国債を発行しての財政出動の検討が今回のケースだけに留まらない可能性が高いでしょう。

政府の出費が増えることが「朗報」なの?借金が増えるんでしょ?

借金が増えると聞くと、一見悪いことのように感じますね。国債についてさらに説明しましょう
国債と物価の関係
国債は国の借金、つまり国が発行する債券ですね。
債券は、デフレに強くインフレに弱い資産クラスです。
昭和初期は、1円というとけっこうな大金でした。その時代からもし金利5%の債券を1円持っていたとしても、例えば70年で33円程度にしかなりません。
33倍になると考えるとすごいことなのですが、これでは資産形成はできませんね。
では、借金をしている側から見たらどうなるでしょうか。1円が大金の時代にそのお金を使うことができて、返すときには33倍でも駄菓子程度の価値になっているなら最高ですよね。
こうした債券の性質は当たり前ですが国債にも言えます。つまり日本がインフレになれば、その分だけ国債の価値が減るということです。
日本に本格的な景気回復は訪れるのか
このまま経済成長が止まっていると、国債は利子が付くばかりでどんどん価値を上げてしまいます。しかし日本がインフレに転じれば、国債発行が嵩んでいても将来的にその価値を減らすことができるわけですね。
もちろん一時的には借金が増えるわけですが、このまま指をくわえて利子が増えるのを見ているより余程未来に希望があります。何より財政出動なしに今の日本で本格的な景気回復ができるとは到底考えられません。
今回発表された額でそれが足りるかと言えば、間違いなく不十分です。しかし「機動的な財政出動」の第一弾として考えるならば、これは朗報だと言えるわけですね。
(正確には、三本の矢が打ち出された当時に一度だけ思い切った財政出動をしているので第二弾ですが。)
三本の矢を掲げながらも、今までの安倍政権では消費税増税を二度も行っており、民主党政権の緊縮路線から離れたとは言えませんでした。これを機に、反緊縮政策に舵を切ってほしいものです。
ただし日本は消費税増税で大打撃を受けると私は予想しています。特に東京オリンピックの後が怖いですね。日本の景気がどうなるのかしばらく目が離せません。
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アベノミクス第一の矢で行なった、大規模な金融緩和の影響が庶民にも押し寄せています。銀行の利用について考える良いタイミングでしょう。
日本の先行き以上に心配なのは老後資金ではないでしょうか。2,000万円が不足すると言われますが希望はあります。
参考・参照:アベノミクス- Wikipedia
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