今回はiDeCo・つみたてNISAのおすすめファンド14選(地域分散型)の後編です。
前回は効果的に地域分散されたファンドをご紹介しました。今回は一国集中タイプやアクティブファンドなど、比較的リスクの高めなものになります。
まずは米国株式から。
おすすめのファンド④ 米国株式
米国株のみのおすすめファンドはちょっと選択肢が多いので、まずは分散率の高いものを比較します。
- 楽天・全米株式インデックス・ファンド
- eMaxis Slim 米国株式(S&P500)
- SBI・バンガード・S&P500インデックスファンド
楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天VTI)
私のいちばんのおすすめであり、実際にポートフォリオをいちばん占めているのは楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天VTI)です。
これはバンガード社のバンガード・トータル・ストックマーケット(VTI)というETFのファンドオブファンズ。ベンチマークはCRSP USトータル・マーケット・インデックスという、日本ではあまり聞かない指標です。
しかしこのETF、日本で一番有名かもしれないというほど人気があります。値動きはS&P500に似ていますが、S&P500の他に中小型株(中小企業の株)が含まれ約4000銘柄に投資できる商品です。
S&P500はその名の通り500銘柄で米国株式市場の上位約80%をカバーしていますが、この商品はなんと99.5%のカバー率。米国市場の成長をそのまま享受できると言っても言い過ぎではありません。これが人気のポイントです。
S&P500がベンチマークのインデックスファンド
eMaxis Slim 米国株式(S&P500)とSBI・バンガード・S&P500インデックスファンドは、もちろんベンチマークがS&P500です。SBI・バンガード・S&P500インデックスファンドはバンガード・S&P500(VOO)というETFのファンドオブファンズ。2019年9月に募集を開始したばかりの新しいファンドです。
二つとも信託報酬が非常に低いのですが、新設ファンドは実質コストがわからないこと、流入額がどうなるのか見えないことなどから単純に比較はできません。今買うなら評価の確立しているeMaxis Slim 米国株式(S&P500)の方が買いやすいですね。
カバー率よりコスト面を重視する場合はこちらの二つから選ぶことになるでしょう。VTIとどちらを選ぶかは、中小型株にどれだけ期待を寄せるかにもよりますね。
余談ですが、今までバンガード社のファンドオブファンズといえば楽天でした。SBIがバンガード社と手を組んだことは業界にそれなりの衝撃を与えたようです。
ダウ平均株価がベンチマークのインデックスファンド
ダウ平均株価をベンチマークとしたファンドもあります。
- eMAXIS NYダウインデックス
- たわらノーロードNYダウ
eMAXIS NYダウインデックスは、”Slim”ではないことに注意してください。信託報酬は高めです。またダウに連動するのでアクティブファンドと捉えるべきでしょう。分散という魅力には欠けるもののダウは特徴的な指標ですので、ダウ平均のインデックスファンドを買いたい人におすすめです。
おすすめのファンド⑤ 債券のみ
おすすめする債券のみのファンドは、実のところありません。
それは私が、長期の積み立て投資をするなら債券はいらないと考えているからです。
株の積み立て投資を続けていると、複利効果で滅多なことでは元本割れが起こらなくなります。時間分散というリスクヘッジがあるにも関わらず、債券100%にするのはやりすぎ、というか返って逆効果ですらあると思います。
債券は確かに値動きが落ち着いてはいますが、株ほどではなくとも下がる時はまぁまぁ下がります。2,3割は株式やREITも組み合わせた方が、返って値動きが安定するはず。資産クラスを一つに集中させることは、債券でもそれなりにリスクなんです。
現時点でつみたてNISAのラインナップに債券100%のファンドがないことからも、この考え方は割に一般的と言えるのではないでしょうか。債券のみはインフレリスクにも対応できませんしね。
楽天でiDeCoを申し込んでおいて商品選びを4ヶ月放置していると、株15%・債券85%(為替ヘッジ有り)の全世界分散型投信、楽天インデックスバランス(年金DC)で勝手に運用が開始されます。なにせ勝手に始まるくらいですから、低リスクなポートフォリオとして参考になるでしょう。
低リスク派は債券の為替ヘッジが欠かせないでしょうし、債券100%にするくらいならこうしたバランスファンドをおすすめします。つみたてNISAなら楽天インデックスバランス(債券重視型)ですね。前回ご紹介しています。
これがラインナップにない証券会社を使っている人はこの条件で近いものを探してみてください。
ただし、iDeCoは受給時に取り崩し戦略を取ることが難しいため、出口戦略として債券の割合を徐々に増やすのは一つの手です。iDeCoの出口戦略についてはまた後日書く予定です。
おすすめのファンド⑥ アクティブファンド
ここまでずっとインデックスファンドの話ばかりしてきました。しかしアクティブファンドにももちろん良いファンド、つまりインデックスファンドを超える成績を残しているファンドはあります。
アクティブファンドの難しいところは、信託報酬が高い故にインデックスを上回る成績を残す困難さを抱え続けていることです。今成績を残している良いファンドが今後も同様に良い成績を出せるかどうかはわかりません。
しかしそれでもアクティブファンドに積み立て投資したい人には以下ファンドがおすすめです。
- ひふみ年金
- ひふみプラス
- セゾン資産形成の達人ファンド
ここで各ファンドへの解説を私が行うことは避けたいと思います。自分の能力ではまだすべきではないだろうというのが理由の一つ。もう一つは、ここから自分で調べて納得できる人でなければおすすめできないからです。
基本的に積み立て投資はインデックスファンドが向いていますが、国内ファンドを買いたい場合にアクティブファンドを検討するのは良い選択ではないかと思います。
私は個人的に日本の市場は当分成長が難しいと考えています。しかしその中でも成長する銘柄は必ずあるはず。勝手知ったる国内だからこそ、そうした「良い会社」を見つけられるファンドを信じるやり方が取れるわけです。
「良い会社」といえば、徹底してそこにこだわる面白いアクティブファンドもあります。これは次章で解説します。その前にアクティブファンドの選び方から。
アクティブファンドはその哲学を知ってから買おう
リスクを取るときには、なんと言ってもそれ相応の納得ができていることが大事です。
ましてアクティブファンドは払い続ける信託報酬が高いもの。購入前に、誰が、どんな方針で投資先を選び、運用しているのかは知っておくべきでしょう。
そしてできればその人となりや投資哲学をある程度理解してから買いたいものですね。
ひふみ年金、ひふみプラスなどを擁するレオス・キャピタルワークスの藤野秀人社長は、全国へ飛び回り自分の足・目・耳を使って投資先を探す人です。それは数値に現れにくい経営者の人格や情熱などを重視するため。講演も多々行なっています。
藤野社長を知るには以下の本がおすすめ。アクティブファンドに興味のない人でも、投資の、あるいはお金の概念が変わる良著ですのでおすすめです。
レビューはこちら。
セゾン資産形成の達人ファンドの運用会社はセゾン投信。前回紹介したセゾン・バンガード・グローバルバランスファンドと同じ会社です。社長の中野晴啓氏は積立王子とも呼ばれ、積立投資を日本に広めるべく数々の著作の出版や講演を行っています。
彼の哲学を知るには以下の本が良いと思います。
前述の藤野社長と、後で紹介するコモンズ投信の渋澤健社長との共著もあります。投資哲学はそれぞれでも、長期投資の重要性を共通認識として強く持っている方々です。
独立系運用会社の特徴
レオス・キャピタルワークスとセゾン投信は大手ではなく独立系運用会社と呼ばれている会社です。この後紹介するコモンズ投信、鎌倉投信も独立系運用会社です。
共通点として独自の哲学があることの他に、積極的な情報開示をしていることが挙げられます。(ついでに言えば独立してファンドを作るほどの情熱もあります。)
いずれの会社も積極的にセミナーを開催したり、ホームページ等で運用に関わるスタッフの顔写真を公開したりしていますので、興味の湧いた人はチェックしてみてください。
おすすめのファンド⑦ 共感を大切にするファンド
ここまで如何にお金を殖やすかという視点でファンドを紹介してきました。しかし実はもう一つだけ商品の選び方があります。それは、おトクかどうか、ではない視点で投資するということ。
もちろん投資である以上はリターンが想定されています。しかし目的は儲かることより自分がお金を出したいと思った組織に出すことです。
ap bankの例
わかりやすい例があります。
Mr.Childrenの桜井和寿とそのプロデューサー小林武史が2003年、ap bankという小さな組織を立ち上げました。当時は環境問題に焦点を絞り、環境問題を解決するためのプロジェクトなどを行なっている団体に対し、低い金利で融資を行うというものでした。
主な資金源となっているbank bandの活動を知っている人も少なくないでしょう。今は組織として成長を遂げ、融資だけでなく持続可能な社会を創るためのさまざまな活動をしています。

こうした使い道になるお金なら、bank bandの音楽はCDで買おうかな。どうせ夏フェスに行くならap bank fesにしようかな。こんな共感が集まれば資金が増えて、結果的に大きな利益につながることもあります。
もちろん、社会問題に取り組まなければならないわけではありません。儲かるかどうかは別にして、応援したい企業の個別株を買って株主優待を受けるのもいいと思います。心から共感を抱いた会社に投資するのも良いと思います。
人生にはお金が必要ですが、お金が全てではありません。心から応援したい誰かを自分にできる形で支えていると感じられることは、人生を豊かにするでしょう。より良くより幸せな人生にするためには、こうした選択肢もあるということです。
共感を大切にするファンド
つみたてNISAの対象ファンドでは、以下の二つがこのような共感を大切にするコンセプトで運営されています。どちらもアクティブファンドに分類されます。
- コモンズ30ファンド
- 結い2101
コモンズ投信のコモンズ30ファンドは30年の長期的視野で世界的に成長を見込める国内株が投資の対象です。収益力に加え「見えない価値」を評価する、5つの軸で30企業を選定しています。
また信託報酬の1%相当を社会起業家に寄付する変わったファンドです。社会起業家とは、社会の課題や問題解決に取り組む事業を行う人たちのこと。NPO法人やベンチャー企業等を組織することが多いので大体はそうした組織への寄付となるようです。
ちなみにコモンズ投信の渋澤健会長は、新一万円札の肖像画に決定した渋沢栄一の子孫なんだそうですよ。
鎌倉投信が一本に注力するファンド結い2101は、前述した「良い会社」に徹底してこだわったファンドです。昔ながらの「三方よし」(売り手・買い手・世間 良し)から発展させた「八方よし」の視点で良い会社を選定。そのコンセプトを投資家と共有することを重視しています。
成績が飛び抜けて優秀というわけではありませんが下げ相場には強く、ファンドを解約する人はほとんどいないそうです。繰上げ償還リスクがその分低いということですね。
今のところ結い2101は鎌倉投信で口座を開かなければ買えないようです。このファンドをつみたてNISA(あるいはNISA)で買うならこれ一本にせざるを得ないのは残念なところですね。
このファンドに興味がある人には以下の本をおすすめします。私が投資の概念を変えさせられた本、の携書化されたものです。
ちなみに私は結い2101に含まれているとある企業のファンであり、個別株を買いたいくらいでしたが上場しておらず諦めた経緯があります。上場していない企業の株が買えるというのも、投資信託の良いところですね。
「投資」というのは投資先の成長に期待して行うものでもあります。こうした共感できるアクティブファンドへの投資を通じ、企業が育つ楽しみや醍醐味を得ることができたら資産形成とはまた違う喜びとなるでしょう。
まとめ
二回に渡っておすすめのファンドを紹介してきました。あなたは何をどれだけ買うか決めることができたでしょうか。
どれたけリスクを取るか悩ましいところですよね。アセット・アロケーションをまず決めて、決めたからには10年は売らないつもりで積み立てることが成功への近道です。
関連記事です。
今回紹介したファンドはSBI証券、楽天証券、マネックス証券でそのほとんどを取り扱っています。
おすすめは積立投資に強みがある楽天証券です。その特典と申し込み手順についてまとめました。
iDeCoはSBI証券もおすすめですが、他の二社より受け取り方に制限があります。改善はしましたがまだある制限をどう感じるかで変わってくるでしょう。
用語がよくわからなかった人、各ベンチマークの特徴がよくわからないという人もいると思います。
こちらの記事でファンドを選ぶための基礎知識をまとめています。納得のファンド選びには欠かせない知識ですね。
参考・参照:
楽天・バンガード・ファンド | はじめての方へ | 投資信託・ETFなら楽天投信投資顧問
とことんコストを追求する投資信託、eMAXISSlim(イーマクシス・スリム)
たわらノーロード|アセットマネジメントOne
SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド(愛称:SBI・バンガード・S&P500)|申込メモ・費用・リスク│SBIアセットマネジメント
レオスの投資信託 | ひふみ投信 | レオス・キャピタルワークス株式会社
ファンドの紹介(つみたてNISA対象商品)|積立投資・つみたてNISA(積立NISA)ならセゾン投信
長期投資をはじめるなら直販投信のコモンズ投信へ -「コモンズ30ファンド」
投資信託「結い2101」のご案内 | 鎌倉投信
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