前回のアセットアロケーションの話を読んだ人は、各資産クラスのこととアセットアロケーションの決め方はとりあえず頭に入りましたよね。
まだ読んでいない人は以下からどうぞ。
アセット・アロケーションの決め方とは?資産の棚卸しと資産クラスを知ることから始めよう
今回は私が考えている日本の先行き予想と、アセットアロケーションで迷ったときはどうするかまでをお伝えします。
日本円はこれからどうなる?
国内資産の良いところは、為替リスクがないこと。と思っている人も多いかと思いますが私はそうは思いません。今はまだ円の価値が安定していますが、長期的には円の価値はどんどん下がると考えているからです。
30年近くデフレ状態の続く日本では、貯蓄への信頼度が絶大です。しかし世界を見渡してみれば、こんな低成長がこれだけ続いている国は先進国で日本だけです。
以下グラフは主要国の名目GDPを比較したもの。アメリカは別格としても各国緩やかに右上がりを続けているところ、日本だけが1995年から成長していないのがわかります。

周りの国は成長しているのですから、円が価値を保ち続けると考えるのは楽観的に過ぎると私は思います。だから円以外の安定通貨を持つ先進国の、成長に与れる株式投資がそのままリスクヘッジになると思うのです。
ちなみにデフレ前には銀行預金でもそれなりに金利がありました。今は普通預金に預けていても0.001%(100万預けて10円)など冗談のような利息しかつきませんが、1980年は3%近く、バブル期にあたる1990年は定期預金なら8%を超えたときもあったそうです。*1 100万預けていれば10年後には倍以上になる計算ですね。
ですから私たちの親世代は、預金で十分にリスクヘッジができたのだと思います。しかし私たちは、この低成長の日本でどうにか生き抜かなければなりません。

でも、円の価値が下がっても日本で暮らしてたらそんなに影響ないんじゃない?

残念ながらそれは甘いです
日本の食料自給率はご存知ですか?
日本で売られている生活必需品が、どれだけ海外の安い労働力に頼っているかは?
円の価値が落ちるということは、こうした食料や労働力が軒並み値上がりするということなんです。
ですから為替ヘッジなど考えず、今のうちに円をインフレに強い海外資産に変えておく方が良いのではないかと思っています。株式と債券でのリスクヘッジではなく、日本円と海外投資でヘッジすると考えるのがこれからは効果的なのではないか、と。
そんなわけで、私のポートフォリオには日本の金融商品はわずかしか入っていません。長期で考えるなら現金の方が機動的だし安全ではないでしょうか。現時点では10年国債を買うより楽天銀行に預けた方が利率が良いですしね(楽天証券と楽天銀行をつなぐ「マネーブリッジ」を利用した場合)。
しかしもちろん個人の意見ですから、鵜呑みにしないで参考程度にしておいてくださいね。
ポートフォリオというのは、金融商品をどう組み合わせるか、その組み合わせのこと。アセットアロケーションは主に資産クラスの割合ですが、ポートフォリオはその内の投資部分に具体的にどの商品を割り当てるかを指します。と言ってもわりとアセットアロケーションと同じような意味で使われるようになっちゃってますけど。
いろいろと怖いことを言いましたが、日本は今のところ世界一の対外純資産を持ってもいますので、円の価値はそうすぐには落ちないです。*2 落ちようがないです。そこは安心してください。
アセットアロケーションを決めるポイント
さてここまでで、各資産クラスと地域におけるリスクを解説しました(国内は解説というより個人的な予想ですが)。
これで納得のアセットアロケーションを決めることができた人は、ここから先は不要ですので次回に行って大丈夫です。
しかしそう言われてもなかなか決めきれないのがアセットアロケーションではないでしょうか。

そりゃあ悩むよ。少しでも資産を殖やしたいもの
プロや玄人は色々と計算や図を用いて効率を最大化しようと考えるみたいですが、私たちにはさすがにそれは難しいです。
なのでWEB上にあるツールをいくつか紹介します。
以下のページには質問にいくつか答えて資産構成のアドバイスをくれたり、資産の将来をシミュレーションしてくれるツールがあります。将来シミュレーションは期待リターンのみのツールが多いの中で、ここはリスク率の入力欄があるところが良心的ですね。(リスク率がわからなければ0を入れて使ってください。)
目標額を入れてシミュレートしたい人はこちらでシミュレーションできます。
ただ、目標額を決めると良いという意見はよく目にしますが、老後資金のための投資は一生モノと考えている私からするとあまり役に立たないように思います。
目標額の達成が厳しいからという理由だけでリスクを大きく取ることが、理に適っているようには私は思いません。反対に目標金額の達成は難しくなさそうだとリスクの低い資産ばかりで固めてしまったら、目標が達成できなかったりインフレについていけなくなってしまうこともあり得ます。
ここでは少なくとも10年以上を想定した積み立て投資を想定しています。
今現在の状況から考えて目標金額を設定しても、10年後20年後にその金額で本当にやっていけるのか。通貨の価値はさほど変わっていないのか。それは誰にもあずかり知らぬところでしょう。貨幣の価値が上下する以上、金額は絶対的な数値ではありません。
ですからあくまでも、本人が耐えられる(納得できる)リスクの範囲にするというのが大事ではないかと私は思います。

目標額を達成するためにがんばって投資のことを学ぶのはアリだよね

そうそう!目標と、金融リテラシーを身につける努力とを結びつけるのは素晴らしいと思います
あとはやはり、色々な経験者の意見をぜひ参考にしてほしいですね。
以下の記事はぜひチェックしてみてください。これを書くにあたり見つけて読みましたが、良い記事だと思います。こちらでもツールの紹介があります。

もう一つ、こちらの記事は年齢や立場別にアセットアロケーションを考えてくれています。書かれている通りにする必要はありませんが、イメージはつかめてくるのではないでしょうか。
人の真似をするのはやめよう
大事なのは、人によって投資に使えるお金もとれるリスクも様々だということ。
ですから「何買えばいいのかな?これが一番人気らしいからこれでいいか」「このブログの人すごそうだから、同じポートフォリオにしよう」のようなやり方は、前提を完全に間違えていると言えます。

米国投資で成功してる人がいたから、同じように米国一本にしようと思ってたよ

今は米国の調子が良いので米国集中投資が流行ってますね。少なくとも流行りに乗ってポートフォリオを変えていくことがないよう気をつけましょう
投資系のブロガーさん達はたくさんおられます。しかしどの程度の収入があり、どれくらいが余裕資金で、こんなアセットアロケーションで、と全て公開している人はさすがにいないのではないでしょうか。全財産のことですからね。
投資を長くしている人は、私たちとは金銭感覚も違えばリスク感覚も全く違います。10%しか現金がないという人であってもそれは1,000万かもしれません。アセットアロケーションと一口に言っても、現金や無リスク資産を含めていない場合もあります。
なのでアセットの割合やポートフォリオだけ見せてもらったところで、どんなに自分と状況が似ているように見えても真似が良いとは限りません。株式100%のポートフォリオの人だって、現金や定期収入はその二倍三倍持っていることもあり得ますよね。
資産形成の成功は、リスクに対して納得できているかどうかにかかっています。自分の少なくない財産を、人にごっそりお任せするのはやめましょう。もちろん私のポートフォリオを真似るのもやめた方が良いです。しかし人の考え方は大いに参考にしてください。

許容できるリスクは人によって違うってこと、忘れちゃいけないんだね
人の意見を聞く作業はこと初心者には欠かせないものですが、あくまで全て参考までにとどめておいてくださいね。
アセットアロケーションは迷うもの
大丈夫です、ここで迷うのは当たり前です。
何しろ正解のない問いです。アセットアロケーションは投資の、特に積み立て投資の要です。プロも経験者もみんな多少の迷いを持っているはず(多分。プロにきいたことはないけど)。
ましてや投資経験が全くないと、自分がどれほどのリスクに耐えられるのかも想像できないのが当たり前ですから。
私は幸いわずかばかりの投資経験があり、一度だけ大幅な(とその時は思った)値下がりを経験しています。リーマンショックのような規模でもないのに「もう今後ここから下がるだけだったらどうしよう」と震えたものです。

ずっと上がっていく保証はないもんね…
一度だけでも経験があるとまた違いますから、初めての方はとりあえずのアセットアロケーションだと思って決めてみても良いかもしれません。何事も経験ですね。
ただし積み立て投資はあまりコロコロ変えるとせっかくの時間という武器を十分に活かせない可能性があります。そのうちには10年変えなくて済むアセットの配分やポートフォリオを考えるようにしてみると良いでしょう。
本を読むのもおすすめです。特にインデックス投資を解説している本を読むと、それだけでもリスク耐性が上がると思いますよ。
ただしアセットアロケーションの本はおすすめしません。複雑な用語や概念や計算の話が大部分でプロ向けの本ばかりという印象です。(そうじゃない本を知ってる人、よかったら教えてください!)
おすすめの本は以下二冊。
どちらか片方だけでも十分かと思います。
セゾン投信の社長、中野晴啓の著書です。
自社の商品をひいき目に紹介するのではという心配はありますが、理想の商品がないから自分でつくることにしたと公言している人です。実際にセゾン投信のファンドが売り出された当初は画期的な商品で注目を集めました。2018年にも賞を取っており、ファンドの方針は古びていません。氏は今ほど積み立て投資が広がっていなかった時代から積み立て投資の重要性を説いており、講演もよく行なっています。
彼は積み立て投資をここまで広めた立役者の一人と言えるでしょう。その意味で、彼の哲学と一緒にiDeCoを考える本は初心者の助けになるだろうと思います。
もう一冊は少し古いですが、読みやすくデータを非常に大事にしている良書です。著者の岡村聡は灘高から東大に、そして卒業後にはマッキンゼーに入った秀才。説得力がありますね。どちらか一冊ということならこちらを推します。時間分散の凄味を感じることができるでしょう。
古くて参考にならないのは今は廃れたリレー投資の話くらい。リレー投資とは、インデックスファンドの積立金がある程度貯まったところで海外のETF(上場投資信託)に移すやり方です。日本のファンドでも各種手数料が安くなってきており、また良いファンドがつくられるようになったことからメリットが激減しました。
それでは次回はポートフォリオの話にいきましょう。
*1:第1回 昔の預金金利は現在の3000倍って本当? 〜預貯金金利の昔と今〜 | 不動産投資・マンション投資ならインヴァランス
*2:【図解・経済】日本の対外資産・純資産・負債残高の推移:時事ドットコム
ゼロからの老後資金づくりの始め方シリーズ
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